関西大学北陽高等学校では、1年生10クラスで『探究活動の進め方』を導入し、3タームにわたる探究学習を進めています。
探究活動の副読本としての効果的な活用方法や、今後の展望を伺いました。(2023年1月取材)
POINT
- 1年間を3タームに分けて学習、『探究活動の進め方』はバイブル的ポジションで活用
- OK例/NG例のインプットを通してプレゼンテーションのクオリティが大幅に向上
- 長期目標は「卒業生が社会人の立場から母校の後輩へ探究の学びを伝える」循環をつくり出すこと
探究活動を「教える」のではなく「導く」ための参考書
2022年度より探究活動をスタートするために、2021年度から学校として探究活動をどのように進めていくかを計画していました。
当時は、探究活動とはどのようなものなのか、どのように始めて良いのかから他の教員含め分からない状態で、教員・生徒ともに共通認識として立ち戻ることができる参考書があったほうが良い、という結論に至りマイナビの『探究活動の進め方』を導入することになりました。
そうはいったものの、そもそも探究活動自体に参考書は必要なのか、と懸念の声もあがっていました。
参考書を持つことで教員の意識が「導く」ではなく「教える」になってしまうのではないか、とも考えられるためです。
しかし、実際に教材を読んでみると、さまざまなフレームワーク・思考ツールなど探究活動に活用できる手法が載っているので、授業計画を立てる段階でも活用しやすかったです。
また『探究活動の進め方』はファシリテートしてくれるような構成になっており、2022年度の探究活動が始まってからも本校に合った内容だと実感できました。
生徒・教員ともに「〇〇で困ったときには△△の考え方や手法を使えばよい」などの考え方を共有できるようになってきたように感じます。
3タームからなる1年間の探究活動の「バイブル」に
本校では高校1学年で2単位のコマ数が探究活動としてあり、1年間を3つのタームに分けて学習を進める計画です。
●ターム1 : 生徒にとって身近な「学校」をテーマにミニ探究。12コマ程度。
●ターム2 : 「学校」から範囲を広げて生徒にとって身近な社会問題をテーマに探究実践。22コマ程度。
●ターム3 : 企×学協働プロジェクト「刀(カタナ)」 31コマ程度。
ターム3の「企×学協働プロジェクト『刀』」は、関西・関東にあるさまざま企業・団体16社と連携する課題解決型学習です。
ターム1・2での学びを通して、絞り込んできた探究領域とマッチする企業にグループごとにエントリーし、通過したら企業からの課題提示を受けて、連携を開始します。
生徒たちは企業訪問やオンラインミーティング、フィールドワークをして、最終的に3月には企業からの課題について解決策やアイデアをプレゼンするという流れです。
『探究活動の進め方』は副読本として活用しています。何かあったときに立ち戻れる、「バイブル」的なポジションです。
特に、第5章「プレゼンテーション」の「スライドのポイント OK/NG」のページが一番活用しやすいと感じました。
テキストに記載のあるスライドのNG例やOK例を参考に自分たちのスライドへ落とし込み、実際に投影してどこがNGでどう改善すればOKになるのかなど、しっかりと時間をかけて生徒たちに考えさせることができました。
そういった活動もあって、プレゼンテーションのクオリティが大幅に上がりました。
PREP法を用いた話し方やスライドなどの資料作りのスキルは、最も目に見えて変化があったところです。
生徒の卒業後も続くような好循環をつくっていきたい
今後は2つの目標をもって探究活動を推進していく考えです。
1つ目は、 生徒発信で学校や地域に変化を起こせるように、教員が生徒を応援できるような環境に変えていくこと。
そのためには、学校全体が探究活動を肯定的に捉えて、教員がレールを引くだけではなく生徒主体で活動できるような環境をつくる必要があります。
2つ目は、 探究活動を通して得た経験や体験を進路指導へつなげること。
これまでの学校教育では企業や社会との関わりがほとんどなかったので、探究活動でさまざまな体験をして視野を広げ、進路選択の幅が広がるようにもっていきたいですね。
将来的には、卒業していった生徒たちが就職したとき、今度は社会人として北陽高校の探究活動に関わってもらえるような循環をつくり出したいと思っています。
高校生のときに「企×学協働プロジェクト『刀』」で学んだ経験を生かして、大人になってから自分の後輩たちに伝えていく。
そんな好循環を生む最初の1年となるよう、今年度の探究活動をやりきります。
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