愛媛県立丹原高等学校では、『答えのない問題に、答える力が身につく本。』を導入し、さまざまなプロジェクトを生徒と教員、そして学校が一緒に挑戦しています。(2022年12月取材)

POINT

  • 総合的な探究の時間「t-time」のナビゲーションとなる教材として活用
  • 教えてもらう、ではなく、生徒が自ら提案・ディスカッションするように変わってきた
  • 教員の企画力が向上、『答えのない問題に、答える力が身につく本。』が学校全体の推進力に

総合的な探究の時間「t-time」のナビゲーションとして導入

「t-time」は、丹原・西条地域を学びのフィールドとした「課題発見→解決プロセス」を通して、「推進力」「創造力」「協働力」「地域力」を養うことを目的とした教育プログラムです。
生徒の資質・能力向上を図り進路実現に結びつけることはもちろん、学校と地域との協働による学びの場づくりであることや、教職員の教育課題への挑戦の場となることを目指して、各課・各部署が連携しプログラムの構築・実践に取り組んでいます。

昨年度より総合的な探究の時間再編に向けた研究に取り組む中で、『答えのない問題に、答える力が身につく本。』に出会いました。
教材の選定において重視したポイントは3つです。
①探究活動や課題解決活動を難しく考えないこと
②生徒や先生が面白い!と思えること
③繰り返す探究活動のさまざまな場面で参考にできること


丹原・西条地域の課題に対し、7つのプロジェクト分野に分かれ、研究・プロジェクトを開始しました。
探究のサイクルを回すとき、困ったら開く参考書、ナビゲーションをしてくれる心強い味方としてテキストを常に持たせて活用するようにしています。
今は2月に実施するプロジェクトプラン・コンテスト(仮)に向け、準備を進めているところです。

研究協議会を通して見えた、生徒のディスカッション力向上

最初にテキストの入門編のディスカッション事例を紹介しました。この事例が面白く、クスっと笑いながらスタートしました。
「探究やディスカッションって楽しんでいいんだ!突拍子もない意見や考えを発言していいんだ!」と発言することへのハードルが下がり、その後の活動に大きな影響を与えてくれました。
そのおかげで、生徒は困りごとや課題を積極的に発信できるようになりました。課題に応じて「テキストのどの部分が活用できるか?」と問いかけ、一緒に考えさせています。
また、教員もサポートや声かけに悩んだときには、まず教員同士で発信・共有するようにしています。
その場面ごとに適した考え方やツールがテキストのどこに載っているかを探し、実際の授業へはめ込む形で活用しています。

テキストを使い始めて数か月、本校を会場にした愛媛県高等学校国際教育研究協議会研究会の打ち合わせにおいて、生徒の変容をうかがえる場面がありました。
教頭・教諭・担当生徒3名で研究協議運営の打ち合わせをした際に、生徒たちから「参加された生徒さんが自分たちの学校の良さを再発見する場にしたい」とコンセプトを提案してくれました。担当の生徒たちだけで事前に考えてきたようです。
他にも、運営に関する課題を具体的に挙げ、ひとつひとつ具体的に解決方法を提案してくれました。
教頭や教諭に「教えてもらう」というスタンスではなく、「私はこう思うのですが、どうですか?」というスタンスでディスカッションが進んでいったことに驚きました。
テキストにも登場する「本質発見力」、「整理分析力」、「伝える力」が高まっていることを感じられました。

学校全体の推進力につながっている

はじめは生徒たちに提供したテキストですが、実は私たち教員の参考書としても活躍しています。
本校では、丹原高校をおもしろく!をテーマに「tanomo」というプロジェクトに取り組んでいます。
「tanomo」では、総合的な探究の時間「t-time」の構築と実践を始め、ルールメイキングプロジェクト、丹原七夕夜市の開催、周桑(しゅうそう)手漉き和紙とつながろうプロジェクト、スポーツで地域とつながろうプロジェクトなど……、多岐にわたったプロジェクトに生徒と教員、学校が一緒に挑戦をしています。
さまざまなプロジェクトに挑戦しながら、教員も生徒もやってみたいことや困ったことがあれば発信・共有するのですが、テキストのどこが活用できそうかを考えながらひとつひとつ解決し前に進むようになりました。
『答えのない問題に、答える力が身につく本。』が教員と生徒の共通言語になってくれたことで、学校全体の推進力につながっていると感じます。


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